第40記 微笑みは思い出に
青々とした葉の髪飾りで、柳色の毛を結い上げる。
「下の毛は少し残して~……はい、でっきあがり~! これでリードもボクとお揃いの髪型だよっ!」
にっこりと微笑みを浮かべた小さな妖精は、エルフの青年を覗き込んだ。
淡い緑のトゥルーメンズも、彼の顔を見つめる。
「あら、可愛いじゃない」
「ホントだ、リード女の子みた……ふげぇっ!」
中世的な顔つきのエルフは、何もしなくても性別の区別が難しい。髪を結っていれば尚更、彼の性別は曖昧なものになる。
自然と溢れた感想に、エルフの青年、リードは不機嫌そうに顔を顰 めた。
「チャイ、もう一回言ってみろ」
「ぐぇ……踏まれてちゃ、おいら何も言えないよー」
リードに足蹴にされたクルースは、ハート型の尾を揺らし、しょんぼりと呟く。
「髪を結ったのはピュアだし、ラキィだって可愛いって言ったのに、何でおいらだけ……」
「何か文句でもあるのか、チャイ?」
反論を許さないという気迫を醸し出し、リードはクルースの子供、チャイを睨みつけた。
額に青筋を浮かべているリードに、チャイはごくりと息を飲み込む。
「な、何でもないよー……」
リードの足に踏まれたまま、「怖いなぁ」と小さく溜息を一つ落とした時。
「お、楽しそうじゃん。俺も混ぜて、混ぜてーっ!」
陽気な声を上げ駆けてきたのは、この森の主人であるラスだった。
父親の登場に、一瞬リードの力が弱まる。
チャイはチャンスとばかりに、その束縛から逃げ出すと、ラスの肩に飛び乗った。
「ラスーっ!」
「おうおう、チャイ、どーした?」
小麦色の肌に、若葉色の髪。
木の聖霊であるラスは、動物たちにとって癒しの象徴。動物たちは、彼に触れると心が温かくなるのだ。
「やっぱり、おいらラスの髪が好きだ」
よいしょ、とラスの頭によじ登る。
半眼で見据えてくるリードに、チャイは頬を膨らませた。
「だって、リードはおいらだけ頭に乗せてくんないんだもん。ピュアやラキィが乗っても怒らないのにさっ」
「ん、そーなのかー、リード?」
目を瞬かせ、ラスが首を傾げる。
相変わらずゆるい父親を睨みながら、リードは低い声で呟いた。
「チャイは重いんだよ……」
その発言を聞き、チャイが奇声を発する。
「ひぅげぇ!? おいら、太ったぁ!?」
あまりのショックに、これでもかというほど瞳を見開くと、ふらりとラスの頭から転げ落ちた。
「おっと。いや、そうでもねぇと思うけどー?」
ラスの両手に受け止められたチャイは、耳を垂れたまま俯く。
「おいら……おいら、フルーツ食べるの、我慢する」
すっかり本気にしているチャイを見て、リードが嘆息した。
「馬鹿……冗談だ」
「リードもチャイをからかうの、ほどほどにしたら?」
「チャイは素直だから、みーんな信じちゃうよっ」
右肩に乗っているラキィに、左肩に座っているピュアに言われ、リードは眉根を寄せて唸る。
チャイは紫の瞳いっぱいに涙を浮かべて、彼を見つめている。
ちょっと言い過ぎたのかもしれない。
仕方なく謝ろうとした時、間の抜けた笑い声が響いた。
「あはは。あーぁ、なんだ。リード、チャイをからかってたのかー。ほら、チャイ泣くなって。まったく、チャイは純粋だよなぁ~。そりゃ、からかいたくもなるってか、リード?」
「……馬鹿親父」
謝罪の機会を父親に奪われたリードは、木に登り、リンゴを一つもぎ取る。
それをチャイに放り投げ、ぶっきらぼうに言った。
「ったく、真に受けてるんじゃねぇよ」
「り、リード……これ食べていいの?」
恐る恐る尋ねてくるチャイに、リードは頬を緩ませる。
「それくらい食っても、太らねぇよ」
木漏れ日が、大樹の森を温かく照らしていた。
◇ ◇ ◇
高い音が、響いた。その音が、駆け抜けた思い出にしがみついていたリードを、現実へと引き戻す。
音源は、目の前。
のろのろと首を上げると、黒いシャツを着た青年が、化け物の爪を受け止めていた。
金髪を靡[ かせ、彼は問う。
「リード、こいつがアレノス?」
「お前は……」
平穏が消えた森に、旧友を連れてやって来た侵入者。
冷たくなったチャイは美しき氷に包まれて、穏やかな表情をしていた。
リードの傍らでチャイを覗き込んでいるのは、侵入者が召喚した水の精霊。
「凍らせておけば、まだ助かる見込みはあるはずよっ……!」
震えながら、氷の中で眠るチャイを撫でているのは、かつて時を共にした旧[ き友。
いや、きっと今も。
「ラキィ……」
「ごめんなさいっ、あたしがちゃんと連れて来てれば……! そしたら、チャイはこんなことにはっ……!」
通わした心は変わらない。
紅い瞳から輝く雫を溢すラキィを見つめ、リードは首を横に振った。
「お前のせいじゃない。俺の」
「違う」
俺のせいだから。
そう言おうとしたリードの声を、青年が遮る。
「悪いのは、こいつだ! リード、こいつがアレノスなんだろ!?」
先ほどより強い声音で、同じ問いを投げかけた。
「そうだ。……それが、アレノスだ」
傷ついたリードとチャイを背に、己のことのように彼は激昂する。
「許さねぇ。ラキィを泣かせて、リードたちを傷つけて……!」
「なぁんだ、アタシの突きを止めたから、どぉんなヤツかと思えば。リードに苦戦してた侵入者じゃん?」
さして興味もなさそうに目を眇めたアレノスは、突き出していた右手を引き、左の爪を振り下ろす。
再び高い音が、森に響き渡った。
白刃と交わった爪は、濁った赤。血を吸った色だ。
「せっかく裏切り者の処分してたのに、邪魔しないでよねっ!」
「リード、ラキィとチャイを連れて下がって!」
小刀で受け止めていた左の爪を流し、アズウェルは前方に駆け抜ける。
右の爪が、直前までアズウェルがいた場所を抉った。
「ちっ、すばしっこいじゃん、アンタ!」
素早くアレノスの背後を取ったアズウェルは、横一線に小刀を振り払う。
だが、斬り裂いた其処に、アレノスの姿はない。
アズウェルを嘲笑する不気味な声が、上空から降ってきた。
「あははははっ! 無理無理っ! アンタにはアタシを斬りつけることなんてできないってーのっ!」
「無理かどうかなんて、やってみなけりゃわからねぇだろっ!」
アズウェルの双眸が、澄んだ蒼から輝く金へ変貌を遂げる。
「ラート!」
名という呪文が与えられた精霊は、アレノスを目指し飛翔した。
「はん、精霊なんてアタシの敵じゃないね。叩き落としてあげるよっ!」
腕の下に生える赤き翼を羽ばたかせ、アレノスは長い左右の爪でラートを追う。
大振りな斬撃の合間を縫い、ラートが空を舞った。
精霊の軌跡は白きベールとなり、アレノスに降り注ぐ。
「何だよ、これっ!」
両爪を振り回し、ベールを払おうとするが、叶わない。
「落ちてこい」
冷たい声音が耳朶に突き刺さると同時に、アレノスの片翼に衝撃が走った。
背筋に悪寒が駆け上がる。
「ちょ、やだ、落ちるっ……!」
ラートのベールに捕らわれた片翼は氷に呑まれ、全身がぐらりと傾[ いだ。
バランスを崩し落下してきたアレノスに、アズウェルは容赦なく小刀を振り下ろす。
「おれが、おまえを斬れないだって……?」
刃は凍り付いた片翼を砕き、輝く氷の粒が宙を舞った。
「アタシの、アタシの翼がっ……!」
「やってみなけりゃわからねぇっつただろ?」
抑揚の乏しい声で、アズウェルは呟いた。
背後に立つ侵入者を肩越しに見据え、アレノスが口端を吊り上げる。
「アンタ、なかなかやるじゃん。こりゃ、本気を出しても良さそうだねぇ?」
「まずい! 金髪、そいつから離れろ!」
リードが叫ぶ。
その声が届くか否かという時、禍々しい魔力が風を伴い、爆発した。
アレノスの魔力に吹き飛ばされたアズウェルは、静かに佇む大樹に背を強打する。
「っ……!」
「アズウェル!」
飼い主の元へ向かおうとするラキィを、リードが抑える。
「だめだ。行けば足手まといになるぞ!」
「でも、アズウェルがっ!」
「あぁ~、ごめ~ん。アタシの魔力に当てられちゃったぁ?」
小刀を支えに立ち上がったアズウェルの頭を、アレノスは上から蹴りつけた。
ただの蹴りではない。アレノスを支えるその一本足には、カギ針のような爪が五本付いていた。
「ぐ……っ……!」
アズウェルの頬を、紅い雫が流れ落ちる。
「アタシのお気に入りの翼。壊してくれたお礼はでかいよ?」
目が霞んで、敵が見えない。
揺らぐ焦点を気力で合わせた時、声も出ない痛みが全身を駆け抜けた。
ぽたりと、鮮血が大地に染みていく。
「何だ、もう終わりぃ~?」
両肩を赤き爪に貫かれたアズウェルは、朱色の息を吐き、がくりと頭[ を垂れる。
「ねぇー、死んじゃったのー? もっと遊べると思ったのにぃ」
残酷な笑みを浮かべて、アレノスはアズウェルの頬を舐めた。
「やっぱ、血の味って最高だねぇ」
ぴくりとも動かないアズウェルを見て、ラキィが叫ぶ。
「アズウェル、アズウェル!」
「ラキィ、だめだ! 行ったら殺されるぞ!」
どれだけ名を呼ぼうとも、アズウェルが顔を上げることはなかった。
「やだ、アズウェル、返事して !!」
叫びは、哀しく森に木霊した。
「下の毛は少し残して~……はい、でっきあがり~! これでリードもボクとお揃いの髪型だよっ!」
にっこりと微笑みを浮かべた小さな妖精は、エルフの青年を覗き込んだ。
淡い緑のトゥルーメンズも、彼の顔を見つめる。
「あら、可愛いじゃない」
「ホントだ、リード女の子みた……ふげぇっ!」
中世的な顔つきのエルフは、何もしなくても性別の区別が難しい。髪を結っていれば尚更、彼の性別は曖昧なものになる。
自然と溢れた感想に、エルフの青年、リードは不機嫌そうに顔を
「チャイ、もう一回言ってみろ」
「ぐぇ……踏まれてちゃ、おいら何も言えないよー」
リードに足蹴にされたクルースは、ハート型の尾を揺らし、しょんぼりと呟く。
「髪を結ったのはピュアだし、ラキィだって可愛いって言ったのに、何でおいらだけ……」
「何か文句でもあるのか、チャイ?」
反論を許さないという気迫を醸し出し、リードはクルースの子供、チャイを睨みつけた。
額に青筋を浮かべているリードに、チャイはごくりと息を飲み込む。
「な、何でもないよー……」
リードの足に踏まれたまま、「怖いなぁ」と小さく溜息を一つ落とした時。
「お、楽しそうじゃん。俺も混ぜて、混ぜてーっ!」
陽気な声を上げ駆けてきたのは、この森の主人であるラスだった。
父親の登場に、一瞬リードの力が弱まる。
チャイはチャンスとばかりに、その束縛から逃げ出すと、ラスの肩に飛び乗った。
「ラスーっ!」
「おうおう、チャイ、どーした?」
小麦色の肌に、若葉色の髪。
木の聖霊であるラスは、動物たちにとって癒しの象徴。動物たちは、彼に触れると心が温かくなるのだ。
「やっぱり、おいらラスの髪が好きだ」
よいしょ、とラスの頭によじ登る。
半眼で見据えてくるリードに、チャイは頬を膨らませた。
「だって、リードはおいらだけ頭に乗せてくんないんだもん。ピュアやラキィが乗っても怒らないのにさっ」
「ん、そーなのかー、リード?」
目を瞬かせ、ラスが首を傾げる。
相変わらずゆるい父親を睨みながら、リードは低い声で呟いた。
「チャイは重いんだよ……」
その発言を聞き、チャイが奇声を発する。
「ひぅげぇ!? おいら、太ったぁ!?」
あまりのショックに、これでもかというほど瞳を見開くと、ふらりとラスの頭から転げ落ちた。
「おっと。いや、そうでもねぇと思うけどー?」
ラスの両手に受け止められたチャイは、耳を垂れたまま俯く。
「おいら……おいら、フルーツ食べるの、我慢する」
すっかり本気にしているチャイを見て、リードが嘆息した。
「馬鹿……冗談だ」
「リードもチャイをからかうの、ほどほどにしたら?」
「チャイは素直だから、みーんな信じちゃうよっ」
右肩に乗っているラキィに、左肩に座っているピュアに言われ、リードは眉根を寄せて唸る。
チャイは紫の瞳いっぱいに涙を浮かべて、彼を見つめている。
ちょっと言い過ぎたのかもしれない。
仕方なく謝ろうとした時、間の抜けた笑い声が響いた。
「あはは。あーぁ、なんだ。リード、チャイをからかってたのかー。ほら、チャイ泣くなって。まったく、チャイは純粋だよなぁ~。そりゃ、からかいたくもなるってか、リード?」
「……馬鹿親父」
謝罪の機会を父親に奪われたリードは、木に登り、リンゴを一つもぎ取る。
それをチャイに放り投げ、ぶっきらぼうに言った。
「ったく、真に受けてるんじゃねぇよ」
「り、リード……これ食べていいの?」
恐る恐る尋ねてくるチャイに、リードは頬を緩ませる。
「それくらい食っても、太らねぇよ」
木漏れ日が、大樹の森を温かく照らしていた。
◇ ◇ ◇
高い音が、響いた。その音が、駆け抜けた思い出にしがみついていたリードを、現実へと引き戻す。
音源は、目の前。
のろのろと首を上げると、黒いシャツを着た青年が、化け物の爪を受け止めていた。
金髪を
「リード、こいつがアレノス?」
「お前は……」
平穏が消えた森に、旧友を連れてやって来た侵入者。
冷たくなったチャイは美しき氷に包まれて、穏やかな表情をしていた。
リードの傍らでチャイを覗き込んでいるのは、侵入者が召喚した水の精霊。
「凍らせておけば、まだ助かる見込みはあるはずよっ……!」
震えながら、氷の中で眠るチャイを撫でているのは、かつて時を共にした
いや、きっと今も。
「ラキィ……」
「ごめんなさいっ、あたしがちゃんと連れて来てれば……! そしたら、チャイはこんなことにはっ……!」
通わした心は変わらない。
紅い瞳から輝く雫を溢すラキィを見つめ、リードは首を横に振った。
「お前のせいじゃない。俺の」
「違う」
そう言おうとしたリードの声を、青年が遮る。
「悪いのは、こいつだ! リード、こいつがアレノスなんだろ!?」
先ほどより強い声音で、同じ問いを投げかけた。
「そうだ。……それが、アレノスだ」
傷ついたリードとチャイを背に、己のことのように彼は激昂する。
「許さねぇ。ラキィを泣かせて、リードたちを傷つけて……!」
「なぁんだ、アタシの突きを止めたから、どぉんなヤツかと思えば。リードに苦戦してた侵入者じゃん?」
さして興味もなさそうに目を眇めたアレノスは、突き出していた右手を引き、左の爪を振り下ろす。
再び高い音が、森に響き渡った。
白刃と交わった爪は、濁った赤。血を吸った色だ。
「せっかく裏切り者の処分してたのに、邪魔しないでよねっ!」
「リード、ラキィとチャイを連れて下がって!」
小刀で受け止めていた左の爪を流し、アズウェルは前方に駆け抜ける。
右の爪が、直前までアズウェルがいた場所を抉った。
「ちっ、すばしっこいじゃん、アンタ!」
素早くアレノスの背後を取ったアズウェルは、横一線に小刀を振り払う。
だが、斬り裂いた其処に、アレノスの姿はない。
アズウェルを嘲笑する不気味な声が、上空から降ってきた。
「あははははっ! 無理無理っ! アンタにはアタシを斬りつけることなんてできないってーのっ!」
「無理かどうかなんて、やってみなけりゃわからねぇだろっ!」
アズウェルの双眸が、澄んだ蒼から輝く金へ変貌を遂げる。
「ラート!」
名という呪文が与えられた精霊は、アレノスを目指し飛翔した。
「はん、精霊なんてアタシの敵じゃないね。叩き落としてあげるよっ!」
腕の下に生える赤き翼を羽ばたかせ、アレノスは長い左右の爪でラートを追う。
大振りな斬撃の合間を縫い、ラートが空を舞った。
精霊の軌跡は白きベールとなり、アレノスに降り注ぐ。
「何だよ、これっ!」
両爪を振り回し、ベールを払おうとするが、叶わない。
「落ちてこい」
冷たい声音が耳朶に突き刺さると同時に、アレノスの片翼に衝撃が走った。
背筋に悪寒が駆け上がる。
「ちょ、やだ、落ちるっ……!」
ラートのベールに捕らわれた片翼は氷に呑まれ、全身がぐらりと
バランスを崩し落下してきたアレノスに、アズウェルは容赦なく小刀を振り下ろす。
「おれが、おまえを斬れないだって……?」
刃は凍り付いた片翼を砕き、輝く氷の粒が宙を舞った。
「アタシの、アタシの翼がっ……!」
「やってみなけりゃわからねぇっつただろ?」
抑揚の乏しい声で、アズウェルは呟いた。
背後に立つ侵入者を肩越しに見据え、アレノスが口端を吊り上げる。
「アンタ、なかなかやるじゃん。こりゃ、本気を出しても良さそうだねぇ?」
「まずい! 金髪、そいつから離れろ!」
リードが叫ぶ。
その声が届くか否かという時、禍々しい魔力が風を伴い、爆発した。
アレノスの魔力に吹き飛ばされたアズウェルは、静かに佇む大樹に背を強打する。
「っ……!」
「アズウェル!」
飼い主の元へ向かおうとするラキィを、リードが抑える。
「だめだ。行けば足手まといになるぞ!」
「でも、アズウェルがっ!」
「あぁ~、ごめ~ん。アタシの魔力に当てられちゃったぁ?」
小刀を支えに立ち上がったアズウェルの頭を、アレノスは上から蹴りつけた。
ただの蹴りではない。アレノスを支えるその一本足には、カギ針のような爪が五本付いていた。
「ぐ……っ……!」
アズウェルの頬を、紅い雫が流れ落ちる。
「アタシのお気に入りの翼。壊してくれたお礼はでかいよ?」
目が霞んで、敵が見えない。
揺らぐ焦点を気力で合わせた時、声も出ない痛みが全身を駆け抜けた。
ぽたりと、鮮血が大地に染みていく。
「何だ、もう終わりぃ~?」
両肩を赤き爪に貫かれたアズウェルは、朱色の息を吐き、がくりと
「ねぇー、死んじゃったのー? もっと遊べると思ったのにぃ」
残酷な笑みを浮かべて、アレノスはアズウェルの頬を舐めた。
「やっぱ、血の味って最高だねぇ」
ぴくりとも動かないアズウェルを見て、ラキィが叫ぶ。
「アズウェル、アズウェル!」
「ラキィ、だめだ! 行ったら殺されるぞ!」
どれだけ名を呼ぼうとも、アズウェルが顔を上げることはなかった。
「やだ、アズウェル、返事して
叫びは、哀しく森に木霊した。
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[戯言]文章表現の難しさ
今日友人らと遊びに出かけてきました。
道中で、ふとボクの小説の話が出たのですが、
「凪音ちゃんの文章はとても日本語として綺麗。時々綺麗過ぎる気がする」
という批評をいただきました。
ほうほう……意識して書いているところはありましたが……過ぎる、とな!
素直に驚きました。
美しい文章を書く作家さんが好きなので、伝わってることが嬉しい半面、過ぎるのかぁと考え込んだり。
何事も過ぎたるは及ばざるが如しっていいますし。
色々聞いてみましたが、いやはや勉強になりました。
ズバズバ物を言ってくれる人が傍にいるのはいいことですね。
そんな話をしている内に、とんでもないことがわかりました(苦笑)
道中で、ふとボクの小説の話が出たのですが、
「凪音ちゃんの文章はとても日本語として綺麗。時々綺麗過ぎる気がする」
という批評をいただきました。
ほうほう……意識して書いているところはありましたが……過ぎる、とな!
素直に驚きました。
美しい文章を書く作家さんが好きなので、伝わってることが嬉しい半面、過ぎるのかぁと考え込んだり。
何事も過ぎたるは及ばざるが如しっていいますし。
色々聞いてみましたが、いやはや勉強になりました。
ズバズバ物を言ってくれる人が傍にいるのはいいことですね。
そんな話をしている内に、とんでもないことがわかりました(苦笑)
「頭(かぶり)を振る」
これはとある小説を読んでいて知った言葉なのですが、覚えた当時中学二年生。
ろくに辞書も引かずに、文字から何となく「頷く」という言葉だと思っていたんです。
ところがどっこい、正反対の意味じゃぁありませんか!w
「不承諾あるいは否定の意を示す」
なんたる事でしょう……また50近くの話をチェックしなければならないのかと思うと、目眩がします…。
単純に中学時代は「あたま」って音より「かぶり」の方が大和言葉として綺麗だから、
そういう読み方をしているんだろうな~って思ってました。恥ずかしい。
改稿していて「これ意味違うじゃん……orz」って思ったのは他にもありまして。
「代物」とか、連載時から直しました。あまりいい意味じゃなかったんですよね。
希少なもの、珍しいものって思っていたんですが、
実際は「品物」とか「評価となる対象をあなどって使う言葉」だったのですorz
いやはや、改稿って地獄ですね。やってもやっても後から後から(ry
そういえば、ふと思い出しました。
今さっき「大和言葉」って書いたのですが、桜木はこれが大好物です。
特に好きなのが「暁降ち」。「あかときくたち」って読むのですが、当然一発変換はできません。
意味は「夜がふけていって明け方近くなる頃」です。
夜明けとか、明け方とか、暁(あかつき)とか、言い方は色々あるのですが、
暁降ちって言葉が一番好きです。単語登録もバッチリですw
他には……
一年の季節 より 四季
一年(いちねん) より 一年(ひととせ)
真っ暗な夜 より 暁闇(ぎょうあん)
たくさん より 数多(あまた)、幾多(いくた)
年齢、年 より 齢(よわい)
眩しい(まぶしい) より 眩い(まばゆい)
……うーん、こういう言葉を使っているから、綺麗過ぎるなんて言われてしまうのかもしれませんねw
対象年齢を下げるときは注意しなければいけないかもしれません……
とはいえDISERDは既にこのスタイルで確立してしまっているので、
テンポやスピードが落ちない程度に気にするくらいだと思います。
そこは桜木のスタイルということで、宜しくお願い致します(´・ω・`)
これはとある小説を読んでいて知った言葉なのですが、覚えた当時中学二年生。
ろくに辞書も引かずに、文字から何となく「頷く」という言葉だと思っていたんです。
ところがどっこい、正反対の意味じゃぁありませんか!w
「不承諾あるいは否定の意を示す」
なんたる事でしょう……また50近くの話をチェックしなければならないのかと思うと、目眩がします…。
単純に中学時代は「あたま」って音より「かぶり」の方が大和言葉として綺麗だから、
そういう読み方をしているんだろうな~って思ってました。恥ずかしい。
改稿していて「これ意味違うじゃん……orz」って思ったのは他にもありまして。
「代物」とか、連載時から直しました。あまりいい意味じゃなかったんですよね。
希少なもの、珍しいものって思っていたんですが、
実際は「品物」とか「評価となる対象をあなどって使う言葉」だったのですorz
いやはや、改稿って地獄ですね。やってもやっても後から後から(ry
そういえば、ふと思い出しました。
今さっき「大和言葉」って書いたのですが、桜木はこれが大好物です。
特に好きなのが「暁降ち」。「あかときくたち」って読むのですが、当然一発変換はできません。
意味は「夜がふけていって明け方近くなる頃」です。
夜明けとか、明け方とか、暁(あかつき)とか、言い方は色々あるのですが、
暁降ちって言葉が一番好きです。単語登録もバッチリですw
他には……
一年の季節 より 四季
一年(いちねん) より 一年(ひととせ)
真っ暗な夜 より 暁闇(ぎょうあん)
たくさん より 数多(あまた)、幾多(いくた)
年齢、年 より 齢(よわい)
眩しい(まぶしい) より 眩い(まばゆい)
……うーん、こういう言葉を使っているから、綺麗過ぎるなんて言われてしまうのかもしれませんねw
対象年齢を下げるときは注意しなければいけないかもしれません……
とはいえDISERDは既にこのスタイルで確立してしまっているので、
テンポやスピードが落ちない程度に気にするくらいだと思います。
そこは桜木のスタイルということで、宜しくお願い致します(´・ω・`)
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2010/08/29 (Sun) 00:13 |
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