DISERD school story*晴れのち桜吹雪
「おい、アズウェル・クランスティ!」
眼帯をした男が、金髪の青年を呼び止める。
「げ、海賊先生……」
「俺は賊ではないと何度も言っている」
「な、何の用ですか」
じりじりと後ずさりしながら、青年アズウェル・クランスティは生徒指導主事のルーティングを睨み上げた。
「貴様、いつになったらそのふざけた金髪を直してくるんだ」
「だからこれは地毛だって言ってんの!」
「金髪は校則違反だぞ!!」
拳骨が降ってくると思った時、何とも間の抜けた声がした。
「たっちゃぁ~ん、アズっちぃ~」
「アズウェルはん、またリューセンセともめごとでっか?」
銀髪にルーズな格好の教師一人と、鉢巻きを巻いた放送委員長が手を振る。
「ほら見ろ! 銀髪先生だっていんのに、何で金髪がダメなんだよ!?」
「……ショウゴは地毛だ」
「おれだって地毛だ!!」
「まぁまぁ、そうカッカせんでもええやないでっか」
爽やかな笑顔で二人の間に入った放送委員長アキラは、くるりと後ろを振り返り、銀髪教師ショウゴに同意を求めた。
「ショーゴセンセもそう思わへん?」
「うんうんー。たっちゃん、アズっちに対して厳しすぎるよー。アズっちは留学生なんだし~、金髪くらい大目に見てあげなよ~」
「俺は生徒指導主事だ。当然の仕事をこなしているまでだ」
心外なと言わんばかりに腕を組み、ルーティングはアキラの格好を見やる。
「おい、アキラ。ワイシャツのボタンを外すなら、ネクタイは締めるな。みっともないぞ」
「あぁ~、すんまへん。どーも、このネクタイっちゅーもんは堅苦しくて。せやけど、してへんと風紀委員長に竹刀で殴られるさかい。それにほら、ショーゴセンセもそういうカッコしとりまっせ?」
「だってこの方が楽ちんじゃ~ん」
飄々 と嘯[ くショウゴに、ルーティングは深く嘆息した。
「お前がそんなんだから、こいつらが校則を守らないんだ……」
頭が痛そうにこめかみを押さえ、「まったくどいつもこいつも……」と唸るルーティングを見て、アズウェルはこそこそと離れていく。
逃げるなら今のうち、今のうち……
「アズウェルー!」
「ひぃ!?」
こっそり逃亡を図っていたアズウェルは、突如名前を大声で呼ばれ、文字通り飛び上がった。
声の主を探すと、再び高い声がした。
「アズウェルー! こっちだ、こっち。下だ」
声に従い、二階の渡り廊下から下を覗くと、長い黒髪を一つに結った女生徒が手を振っている。
「あ、マツザワ! それにユウも!」
「アズウェルさ~ん、アキラさ~ん」
にっこりと微笑みを浮かべ、マツザワの隣にいるおかっぱの少女も手を振る。
「お、マツザワはんにユウやないでっか」
「何してんだー、マツザワー?」
上から覗き込む二人に、マツザワは空を指差して答える。
「桜が降っているんだ。アズウェルも見に来ないか?」
「綺麗ですよ」
言われてから気付いた。
二人の言う通り、確かに淡いピンクの花弁が舞っている。
「今日の天気は桜吹雪だったねー」
のんびりと言うショウゴに、アズウェルは瞳を輝かせる。
「え、春に降るって言う、あのピンクのやつ?」
「うんうん、晴れのち桜吹雪って朝のニュースでやってたよー」
「アキラ、見に行こうぜっ」
「はいな~」
嬉々として駆けていく二人を見つめて、ショウゴは相変わらず溜息をついているルーティングに片目を瞑る。
「みずなちゃんもいるんだし、オレっちたちも見に行こうよー」
「俺は暇じゃない」
「いーじゃん、せっかくのお昼休みなんだしサァ」
渋るルーティングの背中を押し、ショウゴもアズウェルたちの後を追った。
「うはぁ~、すっげぇ、すっげぇ!」
「春がやってきたんやなぁ」
外に出ると、ひらひらと舞い踊る花弁たちが二人を歓迎する。
「これが学園名物〝晴天の桜吹雪〟か~。ディオウたちにも見せてやりたかったのになぁ」
あの海賊先生が動物進入禁止とか言うから連れてこれないのだ。親だと言っているのに。
半眼にして内心で毒突く。
最近この学園に留学生として編入してきたアズウェルは、何故か初日から生徒指導主事に目をつけられ、毎日のようにいがみ合っている。
ショウゴの「気に入られてるんだよー」という言葉を、アズウェルは全く信じられずにいた。
絶対嫌っているに決まってる。あの海賊は。
がくりと両肩を落とし溜息をついたアズウェルの頭に、アキラが手を乗せる。
「ほれ、アズウェルはん。花びらがくっついとりまっせ~」
人差し指と中指でひとひらの花弁を挟み、アキラはにやりと笑う。
「花びらが頭についた人は、この一年、ええことがあるって言われとるんやで」
「いいこと……?」
「せやせや。今年アズウェルはんはラッキーイヤーっつーわけや」
ええな~、と顔を綻ばせるアキラに、アズウェルは眉間にシワを寄せて考え込む。
「ホントにいいことあんのかなぁ……」
ぽつりと呟いた時、後方から不機嫌な怒号が響いた。
「小僧、お前は後で職員室に来い!」
「うぇ!?」
「来なければ、明日の3時限目、ただでは帰さないぞ」
「マジかよー」
しょんぼりと項垂れたアズウェルは思うのだった。
絶対ラッキーイヤーなわけがない、と。
空は快晴。
雲一つ無い青空からは、止め処なく春の便りが降り注いでいた。
Fin.
眼帯をした男が、金髪の青年を呼び止める。
「げ、海賊先生……」
「俺は賊ではないと何度も言っている」
「な、何の用ですか」
じりじりと後ずさりしながら、青年アズウェル・クランスティは生徒指導主事のルーティングを睨み上げた。
「貴様、いつになったらそのふざけた金髪を直してくるんだ」
「だからこれは地毛だって言ってんの!」
「金髪は校則違反だぞ!!」
拳骨が降ってくると思った時、何とも間の抜けた声がした。
「たっちゃぁ~ん、アズっちぃ~」
「アズウェルはん、またリューセンセともめごとでっか?」
銀髪にルーズな格好の教師一人と、鉢巻きを巻いた放送委員長が手を振る。
「ほら見ろ! 銀髪先生だっていんのに、何で金髪がダメなんだよ!?」
「……ショウゴは地毛だ」
「おれだって地毛だ!!」
「まぁまぁ、そうカッカせんでもええやないでっか」
爽やかな笑顔で二人の間に入った放送委員長アキラは、くるりと後ろを振り返り、銀髪教師ショウゴに同意を求めた。
「ショーゴセンセもそう思わへん?」
「うんうんー。たっちゃん、アズっちに対して厳しすぎるよー。アズっちは留学生なんだし~、金髪くらい大目に見てあげなよ~」
「俺は生徒指導主事だ。当然の仕事をこなしているまでだ」
心外なと言わんばかりに腕を組み、ルーティングはアキラの格好を見やる。
「おい、アキラ。ワイシャツのボタンを外すなら、ネクタイは締めるな。みっともないぞ」
「あぁ~、すんまへん。どーも、このネクタイっちゅーもんは堅苦しくて。せやけど、してへんと風紀委員長に竹刀で殴られるさかい。それにほら、ショーゴセンセもそういうカッコしとりまっせ?」
「だってこの方が楽ちんじゃ~ん」
「お前がそんなんだから、こいつらが校則を守らないんだ……」
頭が痛そうにこめかみを押さえ、「まったくどいつもこいつも……」と唸るルーティングを見て、アズウェルはこそこそと離れていく。
逃げるなら今のうち、今のうち……
「アズウェルー!」
「ひぃ!?」
こっそり逃亡を図っていたアズウェルは、突如名前を大声で呼ばれ、文字通り飛び上がった。
声の主を探すと、再び高い声がした。
「アズウェルー! こっちだ、こっち。下だ」
声に従い、二階の渡り廊下から下を覗くと、長い黒髪を一つに結った女生徒が手を振っている。
「あ、マツザワ! それにユウも!」
「アズウェルさ~ん、アキラさ~ん」
にっこりと微笑みを浮かべ、マツザワの隣にいるおかっぱの少女も手を振る。
「お、マツザワはんにユウやないでっか」
「何してんだー、マツザワー?」
上から覗き込む二人に、マツザワは空を指差して答える。
「桜が降っているんだ。アズウェルも見に来ないか?」
「綺麗ですよ」
言われてから気付いた。
二人の言う通り、確かに淡いピンクの花弁が舞っている。
「今日の天気は桜吹雪だったねー」
のんびりと言うショウゴに、アズウェルは瞳を輝かせる。
「え、春に降るって言う、あのピンクのやつ?」
「うんうん、晴れのち桜吹雪って朝のニュースでやってたよー」
「アキラ、見に行こうぜっ」
「はいな~」
嬉々として駆けていく二人を見つめて、ショウゴは相変わらず溜息をついているルーティングに片目を瞑る。
「みずなちゃんもいるんだし、オレっちたちも見に行こうよー」
「俺は暇じゃない」
「いーじゃん、せっかくのお昼休みなんだしサァ」
渋るルーティングの背中を押し、ショウゴもアズウェルたちの後を追った。
「うはぁ~、すっげぇ、すっげぇ!」
「春がやってきたんやなぁ」
外に出ると、ひらひらと舞い踊る花弁たちが二人を歓迎する。
「これが学園名物〝晴天の桜吹雪〟か~。ディオウたちにも見せてやりたかったのになぁ」
あの海賊先生が動物進入禁止とか言うから連れてこれないのだ。親だと言っているのに。
半眼にして内心で毒突く。
最近この学園に留学生として編入してきたアズウェルは、何故か初日から生徒指導主事に目をつけられ、毎日のようにいがみ合っている。
ショウゴの「気に入られてるんだよー」という言葉を、アズウェルは全く信じられずにいた。
絶対嫌っているに決まってる。あの海賊は。
がくりと両肩を落とし溜息をついたアズウェルの頭に、アキラが手を乗せる。
「ほれ、アズウェルはん。花びらがくっついとりまっせ~」
人差し指と中指でひとひらの花弁を挟み、アキラはにやりと笑う。
「花びらが頭についた人は、この一年、ええことがあるって言われとるんやで」
「いいこと……?」
「せやせや。今年アズウェルはんはラッキーイヤーっつーわけや」
ええな~、と顔を綻ばせるアキラに、アズウェルは眉間にシワを寄せて考え込む。
「ホントにいいことあんのかなぁ……」
ぽつりと呟いた時、後方から不機嫌な怒号が響いた。
「小僧、お前は後で職員室に来い!」
「うぇ!?」
「来なければ、明日の3時限目、ただでは帰さないぞ」
「マジかよー」
しょんぼりと項垂れたアズウェルは思うのだった。
絶対ラッキーイヤーなわけがない、と。
空は快晴。
雲一つ無い青空からは、止め処なく春の便りが降り注いでいた。
Fin.
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DISERD school story*配役設定[順次更新有]
DISERDのキャラクターたちで織り成す学園パロディ、DISERD school story。
パロディ世界での配役設定です。キャラが増えれば順次追加します♪
※当時の連載順で陽炎までのメンバーです。第二部初登場の森組は後で追加します。
パロディ世界での配役設定です。キャラが増えれば順次追加します♪
※当時の連載順で陽炎までのメンバーです。第二部初登場の森組は後で追加します。
DISERD学園
ここに学年という概念はない……
秋口に始まり、梅雨に1年が終わる義務教育機関。
つまり、9月に始まり、6月の終わりまである外国の学校に近いのだ。
-主人公一味-
主人公:アズウェル・クランスティ
つい最近学園に来た留学生。
生徒指導主事ルーティングと仲が悪い。金髪のことで度々ぶつかる。
「だから地毛だって言ってんの!!」
全校で一番問題のZ組所属。放送委員長アキラと仲が良い。部活は陸上。
西洋史と体育が得意。授業ではよく当てられるが大抵答えられない。
でもテスト点はほぼ満点。家での勉強量が半端ないとの噂。
父親が白い獣、母親が緑の小動物という変わった家庭で育っている。
ディオウ
アズウェルの父親的存在の白い獣。
アズウェルが成績が良いのは、父親の教育の賜物らしい。
「アズウェル、テストを見せろ」
ラキィ
アズウェルの母親的存在の緑の小動物。
アズウェルの弁当はいつもパン。でも美味しいらしい。
DISERD学園PTA副会長。
もう一人のPTA副会長とつるむと、会長ですら黙らせてしまう。
「もちろん、賛成よね?」
-学園の猛者たち-
学校長:シルード・ウィズダム
若くして学園の長を務める。
爽やかな笑顔がトレードマーク。
校長講話では和やかな空気が体育館に流れる。
「皆さん、おはようございます♪」
生徒指導主事兼学校長補佐:ルアルティド・レジア
学園一の苦労人。剣道部&陸上部顧問。
通称ルーティング。一部の生徒からリュウ先生と呼ばれている。
アズウェルには眼帯のせいか「海賊先生」と呼ばれている(不服らしい)。
授業は特に持っていないが、何故か技術の授業に出てきて指導する。
いつもZ組の生徒に頭を悩ませている。
「仕事を、増やすな……」
Z組担任兼音楽教師:ザント ※雪うさぎ登場キャラ
問題クラスの担任。と言っても放任主義。
保健室の先生であるネーヴェの旦那。
一応吹奏楽部&合唱部顧問で、バスケ部も顧問だが、全て放任主義。
留学生アズウェルと、娘のスニィに滅茶苦茶甘い。
「アズウェル、スニィ。ケーキ食いに行こうぜっ」
彼も金髪だが、年上のせいか、ルーティングに注意されたことはない。
Z組副担任兼物理教師:ショウゴ・ディレイス
ザントと同様放任主義の副担任。剣道部副顧問。
何故彼らがZ組を任されているのか、ルーティングはいつも首を傾げている。
物理担当だが、基本的に理論無視。実演だけで教える。
「身体で覚えた方が早いでしょー?」
-Z組の生徒たち-
R長(ルーム長):クエン
明るく正直に感情を表すところがクラス内で評判がいい。
ロウドやマツザワが生徒会の方で役を持っているため、
クラス内での推薦でR長を任された。
とは言え、Z組で話がまとまることはほとんどなく、
副R長のソウエンの一喝で大体決まる。
「兄弟が切れる前に決めてくれよ」
オールマイティーに物事をこなせる。
副R長:ソウエン
実質、クラスの権力を握っている。
不良頭のヒウガでさえ、黙らせてしまうと言う恐ろしさ。
「話を聞け。それとも灰になりたいか」
背は小さいが頭も良く運動神経も抜群。
マツザワと常に学校トップを争っている。
生徒会長:ロウド
「リルに手ぇ出したら締めるぜ?」
いつも副会長と行動している。
サッカー部キャプテン。
副生徒会長:リル
「ロウドー、お昼一緒に食べよ~!」
校内一の美少女だが、ロウドがいるため誰も手を出さない。
サッカー部マネージャー。
応援団長:カツナリ ※陽炎登場キャラ
母親には頭が上がらないとか。
教師だろうが何だろうが、母親ヤヨイの命令ならば脅して任務を全うする。
柔道部で黒帯。剣道もかなりの腕。
たまに剣道部顧問のルーティングと手合わせしている。
大会の助っ人として、剣道部部長マツザワから参加要請が来ることも。
「大会ッスか? 存分にやらせてもらうッスよ」
風紀委員長:マツザワ・コネクティード
一部、ミズナと呼ぶ者有り。
「風紀を乱す者は許さない」
放送委員長アキラとの喧嘩は日常茶飯事。
剣道部部長。他に茶道部、書道部を兼部している。
ルーティングの妹で、PTA会長の娘。
成績は学校トップ。たまにソウエンに負けることもある。
中でも得意なのは国語、体育。
放送委員長:アキラ・リアイリド
マツザワを呼びたいときに、無視できないように全校放送で流す困った委員長。
音声がフルで全校に流れるため、放送室での喧嘩もリアルタイムで放送される。
校内では「痴話喧嘩放送が始まったw」と言われているが、
当人たちは気付いていない。
アズウェルとよく一緒にいる。ユウの兄。得意教科は数学・体育。
剣道部実力ナンバーワン。顧問に部長を頼まれたが、断ったらしい。
「わいはそないな器やあらへんで」
美化委員長:タカト ※一応陽炎登場キャラ
物静かな青年。年齢は高い方ではあるが顔と声が幼い。
それがコンプレックスなため、普段は鼻から下を黒い布で覆っている。
校内に花を飾ったり、学内植物全般の面倒を見ている。
「……水の上げ過ぎは……かえって、毒だ」
華道部のユウとはそれなりに仲が良い。
普段はもっぱら応援団長カツナリの傍で読書をしているが、
多忙のルーティングを見かねて手伝うこともある。
ルーティング曰く、Z組の中で一番信頼できる人物。ちなみに二番はクエンらしい。
保健委員長:ユウ・リアイリド
保健室の天使と呼ばれている。
「もう、大丈夫ですよ」
彼女に保健室に連れて行ってもたいたいが故に、
仮病を装ったり、わざと怪我をする阿呆が後を絶たない。
得意教科は化学。部活は合気道、華道に所属。
保健副委員長:スニィ ※雪うさぎ登場キャラ
Z組担任ザントと保健室の先生ネーヴェの娘。
ふんわりとした笑顔が人気。保健室の妖精と呼ばれている。
ダンス部所属。アズウェル大好き。両親大好き。甘いものも大好き。
「アズウェル、お父様とケーキ食べに行きましょう」
生物委員:キセル
動物立ち入り禁止の学園だが、
特例で何人か教師がペットを連れてきている。
彼らの世話が主な仕事。
よく保健室にいる。人体模型アルバイトのスカロウと仲が良い。
無口だが、その幼い容姿から年上の女生徒に人気だとか。
苦手科目は音楽。ザントも苦手らしい。
「歌、好きじゃ、ない」
不良頭:ヒウガ
学校一の不良。
態度もでかい上に、授業もよくサボる。
ショウゴの授業は一度も出たことがない。
だが体育だけは得意らしく、人に負けることを嫌う。
バスケ部キャプテン。
「てめぇらなんか、俺様の敵じゃねぇーんだよ」
ヤンキー娘:ユンア
女生徒の中では一番の問題児。そんで馬鹿。
「授業~? ヒウガ出ないんでしょ~ぉ?」
ヒウガとよく行動を共にしている。ヒウガが好き。
バレー部のエースアタッカー。
教師嫌いの眼鏡少年:セロ
勉強は出来るが、教師が大嫌い。
例外で、ルーティングの前だけは素直な態度を取る。
弓道部所属。実力はトップだが、部長などはやりたがらない。
「個人技がいいんですよ。団体戦なんか、僕興味ないですから」
-Z組教担の先生たち-
西洋史:フェルス
サッカー部顧問。古代の歴史からかなり博識。
アズウェルやロウドに「じっちゃん」と呼ばれ慕われる。
アズウェルと同じ家に住んでいるらしい。
「サンタというのは実在の人物なんじゃよ」
日本史:コウキ・コネクティード
合気道顧問、柔道副顧問。剣道部からも声がかかっているが、多忙故断念。
非常勤講師である。抜き打ちテストなどを平然と行う。
「今から配る用紙に、黒板の問の答えを記せ」
また、マツザワとルーティングの父親であり、PTA会長も務める。
厳格なオーラを放っているが、副会長2人組には敵わない。
化学:ゼノン
やることが怪しすぎて、ユウ以外はほとんどついて行けない。
辛うじてマツザワとソウエン、アキラが授業について行こうと努力している。
どこから入手したのか、奇っ怪な薬品を多数持っている。
テストに仮面の絵を描くと点数が上がるらしい。
「素敵な仮面のデザインを考えてネ」
英語:ピエール・ポプキンス
変な書物を読ませられる。
ちなみに、学校にいるピエールは傀儡なので、
本物を見た者は学校長だけらしい。
寝ている生徒は容赦なくステッキで目玉をつつく。
故に、Z組はピエールの授業を一番真面目に受けている。
「そんなに寝たいなら、寝かせて(殺して)あげまショウ」
国語:セイラン ※雪うさぎ登場キャラ
語学同好会顧問。
語学の達人で数カ国語は扱えるという。
授業は割とゆるめ。
たまに嘘を生徒に教えることも……。
年齢不詳の美青年。
「私の歳? 謎は多い方が素敵でしょう?」
数学:親方さん
本名を知る者はいないという謎めいた人。
独特の訛りで理論を説明していくため、マツザワは数学が苦手。
テストではソロバン持ち込み可。
「数と玉。こいつらと仲良くなればええんや!」
体育:アヤ
バレー部顧問。怖い女教師。
サボる奴らは容赦なく叩き潰す。
手を握られたら、骨折の覚悟をしなければならない。
常にリンという子狐のような小動物を肩に乗せている。
「リン、サボっている奴は今何人だ?」
美術:エレク
美術部顧問。
美術室には常時黒バラが生けられている。
女生徒にはめっぽう甘い。
その代わり男子生徒への評価は厳しい。
例外でキセルとアズウェルはそこまででもない。
本人たちはあまり嬉しくない差別の仕方だが。
「僕は美しいものが好きなんだよ」
技術:スチリディー
実際に授業をしたことは皆無。何故なら教えられないから。
それ故、ルーティングがわざわざ技術の時間だけ授業をやりに来る。
教師免許をどのようにして手に入れたのかは謎である。
アズウェルに対する評価は高い。通知表は当然ルーティングが付けているが。
「アズウェル君、君はいつも満点だね。これも直しておいてくれ」
保健:ネーヴェ ※雪うさぎ登場キャラ
主に保健室に待機し、やって来た生徒を温かく迎える。
保健室の女神と呼ばれている。
バレンタインに彼女からチョコを得ようとする男子生徒が多い。
ちなみに、貰えたのはザント、アズウェル、ロウド、
アキラ、キセル、セイランだけらしい。
アキラについて、彼女は、
「アズウェルのお友達? なら、素敵な子なのね」
とそれだけで上げたとのこと。
家庭科:キヨミ
手料理は絶品らしい。華道、茶道部顧問。
彼女の授業は、生徒たちに料理を振る舞うこと。
故に家庭科の授業の人気は異常に高い。
「みんな、美味しい?」
マツザワとルーティングの母親、即ちコウキの妻。
心理学:ヤヨイ ※陽炎登場キャラ
コウキと同じく非常勤講師。柔道部顧問。
また、PTA副会長。カツナリの母親的存在らしい。
どのような授業をしているのか、一切情報は公開されていない。
生徒も口外することを恐れている。
「ヤヨイの言うこと聞けないの?」
-その他の学校の人たち-
事務:ネビセ
書類は山にして大体どっかに姿を消している。
「こんな紙切れ、ゴミに出しちゃえばいいじゃな~い」
ルーティングの悩みの種の一つ。
人体模型アルバイト:スカロウ
普段は保健室にいる。
Z組の人間にはあまり驚かれないが、
他の組の生徒たちからは「七不思議の一つ〝真昼の骸骨〟」として有名。
「アッシ、有名らしいッスねぇ~」
キセルの保護者的存在。
警備員:ゲンチョウ
侵入者を発見し次第、学校長及び学校長補佐に報告している。
その他、学校長からの緊急通達を届けるという仕事もしている。
「迅速に、必ずや届けよう」
警備員:ガンゲツ
主に侵入者の撃退をしている。
彼に踏みつぶされたら、足一本は失うと考えるべき。
最前の砦である。
「この学園に手を出すなど、愚かなことを」
情報屋:リン
アヤ以外にはあまり情報を渡さない。
一部の人間には売ることもある。
「あにゃた、今回のテスト順位知りたいにょ?」
夜の亡霊:スイカ
夜のプールに出るという。
七不思議の中で最も恐れられている。
出くわした者は、恐ろしさのあまり昏倒する。
「答えろ。貴様、何故この時間にここにいる!?」
DISERD school storyは最初から終わりまでギャグです。
掲載回数はそんなにないかとは思いますが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
ここに学年という概念はない……
秋口に始まり、梅雨に1年が終わる義務教育機関。
つまり、9月に始まり、6月の終わりまである外国の学校に近いのだ。
-主人公一味-
主人公:アズウェル・クランスティ
つい最近学園に来た留学生。
生徒指導主事ルーティングと仲が悪い。金髪のことで度々ぶつかる。
「だから地毛だって言ってんの!!」
全校で一番問題のZ組所属。放送委員長アキラと仲が良い。部活は陸上。
西洋史と体育が得意。授業ではよく当てられるが大抵答えられない。
でもテスト点はほぼ満点。家での勉強量が半端ないとの噂。
父親が白い獣、母親が緑の小動物という変わった家庭で育っている。
ディオウ
アズウェルの父親的存在の白い獣。
アズウェルが成績が良いのは、父親の教育の賜物らしい。
「アズウェル、テストを見せろ」
ラキィ
アズウェルの母親的存在の緑の小動物。
アズウェルの弁当はいつもパン。でも美味しいらしい。
DISERD学園PTA副会長。
もう一人のPTA副会長とつるむと、会長ですら黙らせてしまう。
「もちろん、賛成よね?」
-学園の猛者たち-
学校長:シルード・ウィズダム
若くして学園の長を務める。
爽やかな笑顔がトレードマーク。
校長講話では和やかな空気が体育館に流れる。
「皆さん、おはようございます♪」
生徒指導主事兼学校長補佐:ルアルティド・レジア
学園一の苦労人。剣道部&陸上部顧問。
通称ルーティング。一部の生徒からリュウ先生と呼ばれている。
アズウェルには眼帯のせいか「海賊先生」と呼ばれている(不服らしい)。
授業は特に持っていないが、何故か技術の授業に出てきて指導する。
いつもZ組の生徒に頭を悩ませている。
「仕事を、増やすな……」
Z組担任兼音楽教師:ザント ※雪うさぎ登場キャラ
問題クラスの担任。と言っても放任主義。
保健室の先生であるネーヴェの旦那。
一応吹奏楽部&合唱部顧問で、バスケ部も顧問だが、全て放任主義。
留学生アズウェルと、娘のスニィに滅茶苦茶甘い。
「アズウェル、スニィ。ケーキ食いに行こうぜっ」
彼も金髪だが、年上のせいか、ルーティングに注意されたことはない。
Z組副担任兼物理教師:ショウゴ・ディレイス
ザントと同様放任主義の副担任。剣道部副顧問。
何故彼らがZ組を任されているのか、ルーティングはいつも首を傾げている。
物理担当だが、基本的に理論無視。実演だけで教える。
「身体で覚えた方が早いでしょー?」
-Z組の生徒たち-
R長(ルーム長):クエン
明るく正直に感情を表すところがクラス内で評判がいい。
ロウドやマツザワが生徒会の方で役を持っているため、
クラス内での推薦でR長を任された。
とは言え、Z組で話がまとまることはほとんどなく、
副R長のソウエンの一喝で大体決まる。
「兄弟が切れる前に決めてくれよ」
オールマイティーに物事をこなせる。
副R長:ソウエン
実質、クラスの権力を握っている。
不良頭のヒウガでさえ、黙らせてしまうと言う恐ろしさ。
「話を聞け。それとも灰になりたいか」
背は小さいが頭も良く運動神経も抜群。
マツザワと常に学校トップを争っている。
生徒会長:ロウド
「リルに手ぇ出したら締めるぜ?」
いつも副会長と行動している。
サッカー部キャプテン。
副生徒会長:リル
「ロウドー、お昼一緒に食べよ~!」
校内一の美少女だが、ロウドがいるため誰も手を出さない。
サッカー部マネージャー。
応援団長:カツナリ ※陽炎登場キャラ
母親には頭が上がらないとか。
教師だろうが何だろうが、母親ヤヨイの命令ならば脅して任務を全うする。
柔道部で黒帯。剣道もかなりの腕。
たまに剣道部顧問のルーティングと手合わせしている。
大会の助っ人として、剣道部部長マツザワから参加要請が来ることも。
「大会ッスか? 存分にやらせてもらうッスよ」
風紀委員長:マツザワ・コネクティード
一部、ミズナと呼ぶ者有り。
「風紀を乱す者は許さない」
放送委員長アキラとの喧嘩は日常茶飯事。
剣道部部長。他に茶道部、書道部を兼部している。
ルーティングの妹で、PTA会長の娘。
成績は学校トップ。たまにソウエンに負けることもある。
中でも得意なのは国語、体育。
放送委員長:アキラ・リアイリド
マツザワを呼びたいときに、無視できないように全校放送で流す困った委員長。
音声がフルで全校に流れるため、放送室での喧嘩もリアルタイムで放送される。
校内では「痴話喧嘩放送が始まったw」と言われているが、
当人たちは気付いていない。
アズウェルとよく一緒にいる。ユウの兄。得意教科は数学・体育。
剣道部実力ナンバーワン。顧問に部長を頼まれたが、断ったらしい。
「わいはそないな器やあらへんで」
美化委員長:タカト ※一応陽炎登場キャラ
物静かな青年。年齢は高い方ではあるが顔と声が幼い。
それがコンプレックスなため、普段は鼻から下を黒い布で覆っている。
校内に花を飾ったり、学内植物全般の面倒を見ている。
「……水の上げ過ぎは……かえって、毒だ」
華道部のユウとはそれなりに仲が良い。
普段はもっぱら応援団長カツナリの傍で読書をしているが、
多忙のルーティングを見かねて手伝うこともある。
ルーティング曰く、Z組の中で一番信頼できる人物。ちなみに二番はクエンらしい。
保健委員長:ユウ・リアイリド
保健室の天使と呼ばれている。
「もう、大丈夫ですよ」
彼女に保健室に連れて行ってもたいたいが故に、
仮病を装ったり、わざと怪我をする阿呆が後を絶たない。
得意教科は化学。部活は合気道、華道に所属。
保健副委員長:スニィ ※雪うさぎ登場キャラ
Z組担任ザントと保健室の先生ネーヴェの娘。
ふんわりとした笑顔が人気。保健室の妖精と呼ばれている。
ダンス部所属。アズウェル大好き。両親大好き。甘いものも大好き。
「アズウェル、お父様とケーキ食べに行きましょう」
生物委員:キセル
動物立ち入り禁止の学園だが、
特例で何人か教師がペットを連れてきている。
彼らの世話が主な仕事。
よく保健室にいる。人体模型アルバイトのスカロウと仲が良い。
無口だが、その幼い容姿から年上の女生徒に人気だとか。
苦手科目は音楽。ザントも苦手らしい。
「歌、好きじゃ、ない」
不良頭:ヒウガ
学校一の不良。
態度もでかい上に、授業もよくサボる。
ショウゴの授業は一度も出たことがない。
だが体育だけは得意らしく、人に負けることを嫌う。
バスケ部キャプテン。
「てめぇらなんか、俺様の敵じゃねぇーんだよ」
ヤンキー娘:ユンア
女生徒の中では一番の問題児。そんで馬鹿。
「授業~? ヒウガ出ないんでしょ~ぉ?」
ヒウガとよく行動を共にしている。ヒウガが好き。
バレー部のエースアタッカー。
教師嫌いの眼鏡少年:セロ
勉強は出来るが、教師が大嫌い。
例外で、ルーティングの前だけは素直な態度を取る。
弓道部所属。実力はトップだが、部長などはやりたがらない。
「個人技がいいんですよ。団体戦なんか、僕興味ないですから」
-Z組教担の先生たち-
西洋史:フェルス
サッカー部顧問。古代の歴史からかなり博識。
アズウェルやロウドに「じっちゃん」と呼ばれ慕われる。
アズウェルと同じ家に住んでいるらしい。
「サンタというのは実在の人物なんじゃよ」
日本史:コウキ・コネクティード
合気道顧問、柔道副顧問。剣道部からも声がかかっているが、多忙故断念。
非常勤講師である。抜き打ちテストなどを平然と行う。
「今から配る用紙に、黒板の問の答えを記せ」
また、マツザワとルーティングの父親であり、PTA会長も務める。
厳格なオーラを放っているが、副会長2人組には敵わない。
化学:ゼノン
やることが怪しすぎて、ユウ以外はほとんどついて行けない。
辛うじてマツザワとソウエン、アキラが授業について行こうと努力している。
どこから入手したのか、奇っ怪な薬品を多数持っている。
テストに仮面の絵を描くと点数が上がるらしい。
「素敵な仮面のデザインを考えてネ」
英語:ピエール・ポプキンス
変な書物を読ませられる。
ちなみに、学校にいるピエールは傀儡なので、
本物を見た者は学校長だけらしい。
寝ている生徒は容赦なくステッキで目玉をつつく。
故に、Z組はピエールの授業を一番真面目に受けている。
「そんなに寝たいなら、寝かせて(殺して)あげまショウ」
国語:セイラン ※雪うさぎ登場キャラ
語学同好会顧問。
語学の達人で数カ国語は扱えるという。
授業は割とゆるめ。
たまに嘘を生徒に教えることも……。
年齢不詳の美青年。
「私の歳? 謎は多い方が素敵でしょう?」
数学:親方さん
本名を知る者はいないという謎めいた人。
独特の訛りで理論を説明していくため、マツザワは数学が苦手。
テストではソロバン持ち込み可。
「数と玉。こいつらと仲良くなればええんや!」
体育:アヤ
バレー部顧問。怖い女教師。
サボる奴らは容赦なく叩き潰す。
手を握られたら、骨折の覚悟をしなければならない。
常にリンという子狐のような小動物を肩に乗せている。
「リン、サボっている奴は今何人だ?」
美術:エレク
美術部顧問。
美術室には常時黒バラが生けられている。
女生徒にはめっぽう甘い。
その代わり男子生徒への評価は厳しい。
例外でキセルとアズウェルはそこまででもない。
本人たちはあまり嬉しくない差別の仕方だが。
「僕は美しいものが好きなんだよ」
技術:スチリディー
実際に授業をしたことは皆無。何故なら教えられないから。
それ故、ルーティングがわざわざ技術の時間だけ授業をやりに来る。
教師免許をどのようにして手に入れたのかは謎である。
アズウェルに対する評価は高い。通知表は当然ルーティングが付けているが。
「アズウェル君、君はいつも満点だね。これも直しておいてくれ」
保健:ネーヴェ ※雪うさぎ登場キャラ
主に保健室に待機し、やって来た生徒を温かく迎える。
保健室の女神と呼ばれている。
バレンタインに彼女からチョコを得ようとする男子生徒が多い。
ちなみに、貰えたのはザント、アズウェル、ロウド、
アキラ、キセル、セイランだけらしい。
アキラについて、彼女は、
「アズウェルのお友達? なら、素敵な子なのね」
とそれだけで上げたとのこと。
家庭科:キヨミ
手料理は絶品らしい。華道、茶道部顧問。
彼女の授業は、生徒たちに料理を振る舞うこと。
故に家庭科の授業の人気は異常に高い。
「みんな、美味しい?」
マツザワとルーティングの母親、即ちコウキの妻。
心理学:ヤヨイ ※陽炎登場キャラ
コウキと同じく非常勤講師。柔道部顧問。
また、PTA副会長。カツナリの母親的存在らしい。
どのような授業をしているのか、一切情報は公開されていない。
生徒も口外することを恐れている。
「ヤヨイの言うこと聞けないの?」
-その他の学校の人たち-
事務:ネビセ
書類は山にして大体どっかに姿を消している。
「こんな紙切れ、ゴミに出しちゃえばいいじゃな~い」
ルーティングの悩みの種の一つ。
人体模型アルバイト:スカロウ
普段は保健室にいる。
Z組の人間にはあまり驚かれないが、
他の組の生徒たちからは「七不思議の一つ〝真昼の骸骨〟」として有名。
「アッシ、有名らしいッスねぇ~」
キセルの保護者的存在。
警備員:ゲンチョウ
侵入者を発見し次第、学校長及び学校長補佐に報告している。
その他、学校長からの緊急通達を届けるという仕事もしている。
「迅速に、必ずや届けよう」
警備員:ガンゲツ
主に侵入者の撃退をしている。
彼に踏みつぶされたら、足一本は失うと考えるべき。
最前の砦である。
「この学園に手を出すなど、愚かなことを」
情報屋:リン
アヤ以外にはあまり情報を渡さない。
一部の人間には売ることもある。
「あにゃた、今回のテスト順位知りたいにょ?」
夜の亡霊:スイカ
夜のプールに出るという。
七不思議の中で最も恐れられている。
出くわした者は、恐ろしさのあまり昏倒する。
「答えろ。貴様、何故この時間にここにいる!?」
DISERD school storyは最初から終わりまでギャグです。
掲載回数はそんなにないかとは思いますが、少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
DISERD school story*怖いもの知らず
「アズウェル・クランスティ。教科書を見なサイと言っているのデス」
「あ、すんません」
春のうららかな日差しが差し込む中、学園一の問題児クラス、Z組は英語の授業を受けていた。
担当教師は、日本語が若干……いや、かなりよたよたしているピエールだ。
「……それでは、次の段落、カツナリ君読んでくだサイ」
「ちっ、俺かよ」
「返事はどこへ置いてきたのデスか?」
「う、うー……」
「Stop!」
半眼でめんどくさそうに返事をしようとしたカツナリの声は、しかしピエールの怒声で遮られた。
「アズウェル・クランスティ! 教科書をなサイと言っているのに、どこを見ているのデス!?」
「え、あ、いやぁ……」
最前列にいるアズウェルは、決まりの悪そうに苦笑いを浮かべた。
「アズウェル……上に何かあるのか?」
アズウェルの左隣。
そこは風紀委員長マツザワの席だ。
ピエールに聞き取られない程度の小声で囁いたマツザワは、ゆっくりと上がるアズウェルの視線を追う。
「えっと、その……」
教科書ではなく、ずっとアズウェルが見ていたもの。
「何デスか。言いたいことがあるのなら、ハッキリと言いなサイ」
それは、ピエールの無駄に長いシルクハット。
鋭い眼光に気圧されて、渋々と言葉を紡でいく。
「えーと、ディオウが……その、室内で帽子被ってると、禿げるっつってたんですけど……」
教室内が、一瞬無音に包まれた。
そして怒号一発。
「禿じゃねぇッス、坊主ッス!!」
前から四番目、窓際の椅子が大きな音を立て、勢いよく床に叩きつけられた。
本来なら、後ろの席の机にぶつかるのだが。
窓際の列最後尾。教卓から見て一番右端に位置する机は、椅子がギリギリ当たらないところまで下がっている。
『……』
突然立ち上がり、行儀の悪いことに片足を机に乗せ、大声を張り上げているカツナリ。
その背中を副ルーム長のソウエンは無言で睨みつけていた。
「デスから、何が言いたいのデス?」
「いやぁ、だから、ピエール先生、禿げてるんじゃねぇかなぁって……」
再び緊迫した空気が教室を呑み込む。
一拍間を置いて、またカツナリが吠えた。
「だから禿じゃなくて、坊主ッスーっ!!」
「Shut up!!」
両手で弄んでいたステッキを、切れたピエールが投げつける。
ステッキの照準は吠えている応援団長カツナリ。
「うお、あっぶねぇッス!」
持ち前の俊敏さで飛び上がったカツナリは、目玉を潰そうと突っ込んできたステッキを見事に回避する。
みしっという、不吉な音が教室内に響いた。
『いい加減にしろ』
地を這うようにソウエンが唸る。
三度[ 静まりかえった教室は、水を打ったように風の音一つしなかった。
生徒も、窓も、ノートも。
皆、鬼神の怒りに触れまいと、身を固くする。
『さっさと授業を進めろ、馬鹿教師!!』
学園一残虐と評される教官を馬鹿呼ばわりした挙げ句、ソウエンは右手で掴み取った〝手形に歪んだステッキ〟を投げ返す。
そのステッキは先程より数倍速度を上げ、反抗に目を丸くしているピエールのシルクハットに突き刺さる。
地響きを伴い、教室に緊張をもたらす轟音。
ステッキが刺したものは、シルクハットだけに留まらず、教官の背後に佇む黒板の中心を貫いた。
「っ!?」
予想もしていなかった襲撃に、ルーティングは抱えていた書類の山を投げ捨て、後方に飛び退いた。
咄嗟に対応していなかったら、突如現れた黒い凶器に串刺しにされるところだった。
「たっちゃ~ん、何ちらかしてるのー?」
「おい……ショウゴ。今Z組は何の科目を受けている?」
苛立ちを抑えたルーティングの問いに、ショウゴは呑気に答えた。
「確かー、ピエールせんせーの英語だったかなぁ。どうかしたの~……って、たっちゃん?」
最後まで聞くことなく、ルーティングは職員室の扉を開ける。
職員室の右隣は問題児の巣窟Z組だ。
監視も兼ねて隣にしたのが仇になった。
こんな物騒なものが突き出してきたら、落ち着いて事務整理もできやしない。
「誰だ、ステッキを投げたのは!」
扉を開け放つと同時に、怒声を張り上げる。
席に着いているべき生徒たちは、皆あちらこちらに散らばっていた。
アズウェルの背後にぴたりと寄り添うスニィ。
嫌がるマツザワの手を引き、ユウと共に彼女を自分の背後に隠すアキラ。
窓枠によじ登り、ことの成り行きを見守るヒウガたち不良。
あ~あと言わんばかりに、頭の後ろで腕を組み溜息をつくルーム長クエン。
その他に生徒たちもそれぞれ壁や窓に沿って並び、教室中央で繰り広げられている無言の冷戦を見守っていた。
「どう、なってる……?」
状況を飲み込めないルーティングが呟くと、背後から「あっちゃ~」という情けない声がした。
「ソウが犯人なの~?」
まったく、ソウエンをそこまで怒らせないで欲しい。
と、がくりと両肩を落とすショウゴである。
そう、現在教室の中心で教官ピエールと睨み合ってるのは、成績優秀、運動抜群、学園一位を争う優等生……のはずのソウエン。
保護者的立場のショウゴにしてみれば、息子が問題を起こしたに等しい。
あとで学園長からじきじきに呼び出しがかかるだろう。
「ソウ、ソウー! もぉー、何やってるのー!」
誰もが固唾を呑んで見守る中、ショウゴは仁王立ちしているソウエンの元に足を運ぶ。
『この馬鹿が、授業を進めないから悪いんだ』
平然と言い放った優等生に対し、英語教師は冷たく返す。
「授業をまともに受けないクラスに入れられた、貴方自身の責任でショウ」
しかし、ソウエンも負けてはいない。
優等生対教官の弁戦が開幕する。
『俺は、好きでここに来たわけじゃない』
「義務教育なんデスから、仕方がありまセン」
『義務教育にしたのは誰だ』
「それは学園長にお尋ねになってくだサイ」
『学園長の部屋は何処だ』
「私がそれを答えると思いマスか? 今は授業中デスよ」
『力尽くで吐かせてやる』
宣戦布告の発言と共に、ソウエンの両手に蒼白い炎が揺らめく。
「困った、生徒サンデスね」
パチンと指を鳴らしたピエールの頭上には、五つの黒い玉が浮かんでいた。
「……なぁ、ちょっとやばくねぇ? アキラ」
小声で耳打ちするアズウェルに、アキラは頷く。
「せやなぁ……わいらも戦闘準備しとくで」
「真剣を持ってくればよかったな」
腕を組んで眉間にシワを寄せるマツザワに、アキラが半眼で返す。
「何言うとる、ミズナは後ろに下がっとれ」
「ふざけるな。風紀委員長として、放っておくわけにはいかない」
睨み合う二人の間に割って入って、ユウが落ち着いた口調で言った。
「皆さん、無理はなさらぬように……」
「うん、わかってる」
応じたアズウェルのワイシャツの裾を、スニィが引っ張り、首を振る。
『アズウェル、行かないで』
「あー、あー。めんどくせぇことになったッスなぁ」
コキコキと首をならしながら、カツナリは溜息混じりに天井を見上げた。
各々が戦闘態勢に入る中、乱入してきた教官二人が、不機嫌に声を上げる。
「そこまでだ」
異口同音に重なった制止は、アズウェルたちはもちろん、中央の二人にも効果があったようだ。
「ソウ、いい加減にしないと、オレも怒るよ?」
『……邪魔をするな』
「ソウエン!」
ぴしゃりと怒鳴りつけたショウゴは、小柄なソウエンを抱え上げる。
『放せ、ショウゴ』
「ソウ、少し頭冷やした方がいい。プールに投げ込んであげるから」
明るい口調で言われた台詞だが、ソウエンはショウゴの顔を見て硬直した。
怒っている。
それも、切れたのを通り越している。
『……だから学校など面倒なだけなんだ』
しょんぼりと項垂れるソウエンと珍しく切れたショウゴを見送り、ルーティングはピエールを睨みつけた。
「首にされたくなかったら、大人しく黒板に突き刺さったステッキを抜いて、帰れ」
「まだ、授業は終わっていまセンよ?」
「今日はもう終わりだ。そのバーコード頭も何とかしてこい。傀儡のくせに無駄なところまで凝るから、生徒に馬鹿にされるんだ」
裏でクエンに事情を聞いていたルーティングは、問答無用だと言わんばかりのオーラを放ち、ピエールを見据える。
「リアリティに欠けることは、傀儡師のプライドに反しマスから。……終わりということならいいでショウ。せっかくの特注シルクハットも台無しにされてしまいマシタから、私はこれから帽子屋に行ってきマス。では失礼」
パチンという音が鳴ったと思った時には、ピエールの姿も、黒板に串刺しにされていたシルクハットも、問題の一因とも言えたステッキも、綺麗さっぱり無くなっていた。
「今日の講義はこれで全部終わりにする。お前たちは黒板の修理をしろ。……それと」
はぁ、と溜息を一つついて、ルーティングは額を右手で覆った。
「アズウェル・クランスティとカツナリは職員室に来い。今、すぐだ」
「うぇ~」
「俺もッスか……」
本当に、心底思う。
仕事をこれ以上増やさないでくれ、と。
早く休みが来ないだろうか。
「まだ……随分先だな」
学校が終わるのは梅雨の終わり。
それまでは、身を粉にして働かなければならないのだ。
未だに渋っている二人を睨み、苦労人ことルーティングは、厳かに言い放つ。
「問答は、無用だ」
校舎の外を舞う花弁たちも。
今日もまた、教室の修理を行うZ組の生徒たちも。
その彼らに頭を悩ませるルーティングも。
皆、春の日常そのものだった。
Fin.
「あ、すんません」
春のうららかな日差しが差し込む中、学園一の問題児クラス、Z組は英語の授業を受けていた。
担当教師は、日本語が若干……いや、かなりよたよたしているピエールだ。
「……それでは、次の段落、カツナリ君読んでくだサイ」
「ちっ、俺かよ」
「返事はどこへ置いてきたのデスか?」
「う、うー……」
「Stop!」
半眼でめんどくさそうに返事をしようとしたカツナリの声は、しかしピエールの怒声で遮られた。
「アズウェル・クランスティ! 教科書をなサイと言っているのに、どこを見ているのデス!?」
「え、あ、いやぁ……」
最前列にいるアズウェルは、決まりの悪そうに苦笑いを浮かべた。
「アズウェル……上に何かあるのか?」
アズウェルの左隣。
そこは風紀委員長マツザワの席だ。
ピエールに聞き取られない程度の小声で囁いたマツザワは、ゆっくりと上がるアズウェルの視線を追う。
「えっと、その……」
教科書ではなく、ずっとアズウェルが見ていたもの。
「何デスか。言いたいことがあるのなら、ハッキリと言いなサイ」
それは、ピエールの無駄に長いシルクハット。
鋭い眼光に気圧されて、渋々と言葉を紡でいく。
「えーと、ディオウが……その、室内で帽子被ってると、禿げるっつってたんですけど……」
教室内が、一瞬無音に包まれた。
そして怒号一発。
「禿じゃねぇッス、坊主ッス!!」
前から四番目、窓際の椅子が大きな音を立て、勢いよく床に叩きつけられた。
本来なら、後ろの席の机にぶつかるのだが。
窓際の列最後尾。教卓から見て一番右端に位置する机は、椅子がギリギリ当たらないところまで下がっている。
『……』
突然立ち上がり、行儀の悪いことに片足を机に乗せ、大声を張り上げているカツナリ。
その背中を副ルーム長のソウエンは無言で睨みつけていた。
「デスから、何が言いたいのデス?」
「いやぁ、だから、ピエール先生、禿げてるんじゃねぇかなぁって……」
再び緊迫した空気が教室を呑み込む。
一拍間を置いて、またカツナリが吠えた。
「だから禿じゃなくて、坊主ッスーっ!!」
「Shut up!!」
両手で弄んでいたステッキを、切れたピエールが投げつける。
ステッキの照準は吠えている応援団長カツナリ。
「うお、あっぶねぇッス!」
持ち前の俊敏さで飛び上がったカツナリは、目玉を潰そうと突っ込んできたステッキを見事に回避する。
みしっという、不吉な音が教室内に響いた。
『いい加減にしろ』
地を這うようにソウエンが唸る。
生徒も、窓も、ノートも。
皆、鬼神の怒りに触れまいと、身を固くする。
『さっさと授業を進めろ、馬鹿教師!!』
学園一残虐と評される教官を馬鹿呼ばわりした挙げ句、ソウエンは右手で掴み取った〝手形に歪んだステッキ〟を投げ返す。
そのステッキは先程より数倍速度を上げ、反抗に目を丸くしているピエールのシルクハットに突き刺さる。
地響きを伴い、教室に緊張をもたらす轟音。
ステッキが刺したものは、シルクハットだけに留まらず、教官の背後に佇む黒板の中心を貫いた。
「っ!?」
予想もしていなかった襲撃に、ルーティングは抱えていた書類の山を投げ捨て、後方に飛び退いた。
咄嗟に対応していなかったら、突如現れた黒い凶器に串刺しにされるところだった。
「たっちゃ~ん、何ちらかしてるのー?」
「おい……ショウゴ。今Z組は何の科目を受けている?」
苛立ちを抑えたルーティングの問いに、ショウゴは呑気に答えた。
「確かー、ピエールせんせーの英語だったかなぁ。どうかしたの~……って、たっちゃん?」
最後まで聞くことなく、ルーティングは職員室の扉を開ける。
職員室の右隣は問題児の巣窟Z組だ。
監視も兼ねて隣にしたのが仇になった。
こんな物騒なものが突き出してきたら、落ち着いて事務整理もできやしない。
「誰だ、ステッキを投げたのは!」
扉を開け放つと同時に、怒声を張り上げる。
席に着いているべき生徒たちは、皆あちらこちらに散らばっていた。
アズウェルの背後にぴたりと寄り添うスニィ。
嫌がるマツザワの手を引き、ユウと共に彼女を自分の背後に隠すアキラ。
窓枠によじ登り、ことの成り行きを見守るヒウガたち不良。
あ~あと言わんばかりに、頭の後ろで腕を組み溜息をつくルーム長クエン。
その他に生徒たちもそれぞれ壁や窓に沿って並び、教室中央で繰り広げられている無言の冷戦を見守っていた。
「どう、なってる……?」
状況を飲み込めないルーティングが呟くと、背後から「あっちゃ~」という情けない声がした。
「ソウが犯人なの~?」
まったく、ソウエンをそこまで怒らせないで欲しい。
と、がくりと両肩を落とすショウゴである。
そう、現在教室の中心で教官ピエールと睨み合ってるのは、成績優秀、運動抜群、学園一位を争う優等生……のはずのソウエン。
保護者的立場のショウゴにしてみれば、息子が問題を起こしたに等しい。
あとで学園長からじきじきに呼び出しがかかるだろう。
「ソウ、ソウー! もぉー、何やってるのー!」
誰もが固唾を呑んで見守る中、ショウゴは仁王立ちしているソウエンの元に足を運ぶ。
『この馬鹿が、授業を進めないから悪いんだ』
平然と言い放った優等生に対し、英語教師は冷たく返す。
「授業をまともに受けないクラスに入れられた、貴方自身の責任でショウ」
しかし、ソウエンも負けてはいない。
優等生対教官の弁戦が開幕する。
『俺は、好きでここに来たわけじゃない』
「義務教育なんデスから、仕方がありまセン」
『義務教育にしたのは誰だ』
「それは学園長にお尋ねになってくだサイ」
『学園長の部屋は何処だ』
「私がそれを答えると思いマスか? 今は授業中デスよ」
『力尽くで吐かせてやる』
宣戦布告の発言と共に、ソウエンの両手に蒼白い炎が揺らめく。
「困った、生徒サンデスね」
パチンと指を鳴らしたピエールの頭上には、五つの黒い玉が浮かんでいた。
「……なぁ、ちょっとやばくねぇ? アキラ」
小声で耳打ちするアズウェルに、アキラは頷く。
「せやなぁ……わいらも戦闘準備しとくで」
「真剣を持ってくればよかったな」
腕を組んで眉間にシワを寄せるマツザワに、アキラが半眼で返す。
「何言うとる、ミズナは後ろに下がっとれ」
「ふざけるな。風紀委員長として、放っておくわけにはいかない」
睨み合う二人の間に割って入って、ユウが落ち着いた口調で言った。
「皆さん、無理はなさらぬように……」
「うん、わかってる」
応じたアズウェルのワイシャツの裾を、スニィが引っ張り、首を振る。
『アズウェル、行かないで』
「あー、あー。めんどくせぇことになったッスなぁ」
コキコキと首をならしながら、カツナリは溜息混じりに天井を見上げた。
各々が戦闘態勢に入る中、乱入してきた教官二人が、不機嫌に声を上げる。
「そこまでだ」
異口同音に重なった制止は、アズウェルたちはもちろん、中央の二人にも効果があったようだ。
「ソウ、いい加減にしないと、オレも怒るよ?」
『……邪魔をするな』
「ソウエン!」
ぴしゃりと怒鳴りつけたショウゴは、小柄なソウエンを抱え上げる。
『放せ、ショウゴ』
「ソウ、少し頭冷やした方がいい。プールに投げ込んであげるから」
明るい口調で言われた台詞だが、ソウエンはショウゴの顔を見て硬直した。
怒っている。
それも、切れたのを通り越している。
『……だから学校など面倒なだけなんだ』
しょんぼりと項垂れるソウエンと珍しく切れたショウゴを見送り、ルーティングはピエールを睨みつけた。
「首にされたくなかったら、大人しく黒板に突き刺さったステッキを抜いて、帰れ」
「まだ、授業は終わっていまセンよ?」
「今日はもう終わりだ。そのバーコード頭も何とかしてこい。傀儡のくせに無駄なところまで凝るから、生徒に馬鹿にされるんだ」
裏でクエンに事情を聞いていたルーティングは、問答無用だと言わんばかりのオーラを放ち、ピエールを見据える。
「リアリティに欠けることは、傀儡師のプライドに反しマスから。……終わりということならいいでショウ。せっかくの特注シルクハットも台無しにされてしまいマシタから、私はこれから帽子屋に行ってきマス。では失礼」
パチンという音が鳴ったと思った時には、ピエールの姿も、黒板に串刺しにされていたシルクハットも、問題の一因とも言えたステッキも、綺麗さっぱり無くなっていた。
「今日の講義はこれで全部終わりにする。お前たちは黒板の修理をしろ。……それと」
はぁ、と溜息を一つついて、ルーティングは額を右手で覆った。
「アズウェル・クランスティとカツナリは職員室に来い。今、すぐだ」
「うぇ~」
「俺もッスか……」
本当に、心底思う。
仕事をこれ以上増やさないでくれ、と。
早く休みが来ないだろうか。
「まだ……随分先だな」
学校が終わるのは梅雨の終わり。
それまでは、身を粉にして働かなければならないのだ。
未だに渋っている二人を睨み、苦労人ことルーティングは、厳かに言い放つ。
「問答は、無用だ」
校舎の外を舞う花弁たちも。
今日もまた、教室の修理を行うZ組の生徒たちも。
その彼らに頭を悩ませるルーティングも。
皆、春の日常そのものだった。
Fin.